| おもい |
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1,愛恋花火 中国の映画には、古い因習に苦しむ人たちの姿を描いた物が多いでが、これもその一つ。或る花火商の家に生まれた主人公は、女で有りながら、一人っ子のため、家を継ぐべく男として育てられる。因習により、彼女は一生結婚は許されない。 しかしある日、ふらりと町にやってきた絵描きと恋いにおち、二人は結婚を望むが、当然一族の猛反対に遭い、引き裂かれてしまう。結局、花火を使った試合で優勝した人間となら、結婚を認める、ということになり、絵描きは必死に花火に付いて勉強を始め、試合に参加する。 ストーリーは暗いけど、普段テレビなどでは紹介されない、黄河上流域の景観や雰囲気を伝える映像は、なかなか見応えがあります。蕩々と流れる水、というイメージは下流域だけなんですね。特に、主人公が町を去る恋人への餞別に代えて、黄河の両岸から花火を打ち上げる場面は、大好きなシーンの一つです。
戦後、台湾が日本からの独立を果たした後、大陸から国民党がやってきて、台湾を支配するようになりました。その国民党の支配がまだ安定していない頃の、小さな村が舞台。一人のやんちゃで、絵の大好きな少年が主人公。 少年はいたずらばかりして、大人たちの頭痛の種だが、都会からやってきた美術教師は、彼の才能を見抜き、彼の絵をコンクールに出品しようとする。しかし、他の先生たちは村の有力者に遠慮して、彼の息子の絵を強引に出品してしまう。少年は失望し、描きためた絵を全 部捨ててしまい、持病の肝臓の病気も悪化してしまう。しかし、美術教師は密かに少年の絵を別のコンクールに出品しており、少年の絵は優賞したのだった。 映画の題名でもある「魯氷花(ルーピンホワ)」の歌が、映画を盛り上げてます。懐かしいようで、ちょっと切なげなこの童謡は、少年の心の拠り所だったのではないでしょうか。少年の演技も良いと思います。特に絵をはがし、クレヨンを湖に捨てる時の表情は、ぐっと来る物があります。少年の家の前にある湖の景色は正に、一幅の絵、です。脇役の姉の演技と共に、映画に彩りを添えています。
祖父は京劇役者、父は映画監督、母は女優、という家に生まれた少年。少年自身も京劇の劇団に所属させられている。両親は仕事が急がしく、あまり少年をかまってあげられない。その両親が離婚することになり、少年は今まで会ったことも無かった祖父(母方)の元に預けられる。最初はぎこちなく、何もかもかみ合わない二人だが次第にうち解け、少年も今までに無かった心の安らぎを覚える。 少年と祖父の心の交流、二人を取り巻く人物像をとても丁寧に描いてます。京劇の才能がありながら練習嫌いの少年が、祖父との交流の中で京劇を愛するようになる過程は、文革への批判があると思うのですが、大変自然で、嫌みがありません。特に最後、母の元に引き取られていくときの場面は、何度見ても泣けます。私のイチオシです(^^)
中国で実際にあった事件を扱ったもの。工場に勤める、平凡で真面目な青年。彼は子供の頃父を亡くし、母は再婚したが、新しい父とはなじめず、一人都会に出て働いている。しかし、ふとしたきっかけから、母が実の父を殺したのではないかという疑いを抱き、母を告発する。結局、事件は解決し、母は死刑に処せられる。 この事件は中国の東北の農村で起きました。日本でもそうですが、特に中国では伝統的に身内の事件は身内でかたを付けるものでした。共産党が政権を握ってから、「法」と言う観念が浸透していきましたが、やはり、身内、しかも実の母を告発し、死刑に至らしめるというのは、かなりショッキングな事だったようで、事件が報道されるや、百通を越える手紙が青年の元に届き、その中賛成と反対は半々だったそうです。
国共内戦後、政権を握った共産党は、それまで公認されていた伎楼を全て廃止し、娼妓たちを厚生施設に送ることにした。姉妹の様に仲の良かった二人の娼妓の一人は施設に残るが、一人は逃げ出す。その後の二人の人生は正に有為転変である。自由な生き方を求めた為に社会のどこにも居場所が無くなり、結局老人と結婚する事で落ち着いた女と、人に頼って幸せを求め結婚をするが、夫が刑務所へ送られたため、子供を捨てて逃げ出し、他の男の元へ走る女。どちらの生き方が正しくて、どちらが幸せと言えるのか。
当時の中国は資本主義を打倒すると言う目標を掲げ、それまでの社会を全て否定し、新しい中国を作ろうとしていたのですが、その中で生ずる社会の混乱に多くの人が巻き込まれ苦しみました。この映画は、平凡で小さな幸せを手に入れるためにあがく、人間の悲しみを描いたものでは無いでしょうか。 1920年代の東北山間部の農村が舞台。染物屋の後妻として金で買われてきた菊豆は、年の離れた主人から毎晩のように折檻をされる。一方、そこの主人の甥に当たる天白は牛馬のようにこき使われ、40になっても結婚もさせて貰えずにいる。共に主人から虐待される二人はやがて愛し合うようになり、子供も出来る。しかも主人は病気のため歩けなくなり、二人は本当の夫婦のように暮らすのだが、主人の病死を境に次第にかげりが見えてくる。 これまた、かなり暗い映画。古い因習への批判、特に虐げられる人間の苦しみを描いた物だと思います。ストーリー自体は中国映画に多い物かも知れませんが、色の使い方がなかなか凝っていておもしろいです。
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